COLUMN ご自宅での輸血を決断したとあるご夫婦の一コマ
A scene of a married couple
who decided to transfusion at home
こんにちは。
看護師長の榊原です。
今回はご自宅での輸血を決断したとあるご夫婦の一コマについて紹介させてください。
・奥様の発病
ある日、奥様に再生不良性貧血という診断が出ました。
週に2回、北医療に車で送り、数時間ロビーで待ち、奥様を連れて家に帰るということを1年半も続けました。
当時は、これしか生きる道はないと思っていたのです。
何回か入院があり、そのうち入院の回数が多くなり、まるで一人暮らしのような感じになっていきました。
コロナで、また病気で、着替えを届けても会うこともできず、顔を見ることもできません。
看護師から「輸血をしてますよ」という言葉を聞くことしかできませんでした。
寂しいし、ただただ心配でした。
・葛藤と決断
そんなとき、家で輸血ができるという話を耳にします。
「そんなの恐ろしくてできるもんか。」と恐怖感を抱いたものの、このままずっと顔も見れない、話もできないのもつらい……葛藤の末、退院カンファレンスを迎えました。
やってきた医師と看護師から「大丈夫」という太鼓判をもらい、思い切って決断しました。
・ご自宅での幸せな時間
奥様が家に帰って、自分の作ったご飯を食べてくれるのが嬉しいと喜んでいます。
ご主人の得意料理はすき焼きです。
「肉を食べないと元気が出ません。」とおっしゃっています。
ご自宅の中にも手すりをつけて、毎日お風呂にも入っています。
もちろん、トイレもひとりで行っています。
「前より元気かもしれない」と思うこともあるそうです。
それでも何よりもご主人とご飯食べたり、ご主人の面白い冗談で笑ったりという何気ない一瞬一瞬が幸せなのです。
重い荷物持って準備をして、輸血の間にはおしゃべりして……赤い輸血(RBC)をすると奥様の顔はパッと明るくなります。
輸血の後、元気になってスイスイ歩けて、このままダンスできるかも!と思ってしまうほどです。
「お父さんは私が心配。私もお父さんが心配。帰って来れてよかったと思います」
輸血の時間はご主人や奥様、そして私自身にとっても大切な時間です。